氷嚢ひようなう)” の例文
彼の使つた氷嚢ひようなうはカラ/\になつて壁にかゝつてゐる。窓際の小机の上には、数疋すうひきの金魚がガラスのはちにしな/\泳いでゐる。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
氷嚢ひようなうや、注射ちうしやより、たゞかみつめたいのが、きつけにつて、幾度いくたびも、よみがへり、よみがへり、よみがへたびに、矢張やはりおなところに、ちやんとひざんでます。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼は母と友人に送られて、頭に氷嚢ひようなうをつけて入場したのであつたが、第一の課目を終へて出て来たときには、顔は真蒼まつさをになつてゐた。そして近所の医者の手当を受けて自動車で帰つて来た。
花が咲く (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)