気仙けせん)” の例文
旧字:氣仙
それが気仙けせんの尾崎や唐桑からくわ、あるいは秋田の椿の浦のように、付近に比べて特に温暖な土地だけに、限られているのは言うまでもない。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
佐沼は仙台よりはまだずっと奥で、今の青森線の新田にった駅或はせみね駅あたりから東へ入ったところであり、海岸へ出て気仙けせんの方へ行く路にあたる。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其頃私の姉の家では下宿屋をして居たが、其家そこに泊つて居た髭……違ふ、違ふ、アノ髭なら気仙けせん郡から来た大工だと云つて、二ヶつきも遊んでから喰逃して北海道へ来た筈だ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それは陸前の登米とめ本吉もとよし気仙けせんの諸郡から、陸中の東磐井ひがしいわい、江刺(以上旧仙台領)
東奥異聞 (新字新仮名) / 佐々木喜善(著)
苗打小野郎なえうちこやろうなどと名づけて十一二歳の少年までが、それぞれの一役を課せられた。苗打ちはカンナイドの役と、気仙けせん郡などではっている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
気仙けせん地方にもオミサキツリという語がある。社寺に参って供えた散米さんまいを、烏がついばむことをそういうのだそうである。
この日を戦の祝いと称して弓箭きゅうせんもてあそぶのは、何か雛祭と調和せぬようであるにもかかわらず、太平洋に面した陸中の釜石に陣場じんば遊びがあり、その南隣の気仙けせんでは
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
海尊仙人が住んでいたという口碑あり、また陸前気仙けせん郡の唐丹とうにの観音堂の下にも、昔常陸坊が松前まつまえから帰りがけにこの地を通って、これは亀井の墓だと別当山伏の成就院じょうじゅいん
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ハラスマイ 奥州の気仙けせん地方で塩辛または「ひしお」のことだという。語原は不明。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
奥州では南部の沼宮内ぬまくない、陸前の気仙けせん郡、羽後の飽海あくみ郡などの数カ所だけであって、その他は陸中の上閉伊かみへい江刺えさしの二郡、羽前の米沢よねざわ、南秋田の半島、および信州の下水内しもみのち郡において
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
宮城県北部の登米とよま郡その他、岩手県の気仙けせん郡などもともに、センバコキと謂えば一般に櫛の歯式稲扱器、すなわち南隣の阿武隈あぶくま流域などで、前からカラハシと呼んでいたものを指したらしい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)