母御ははご)” の例文
「父親の官兵衛よりは眉目みめい。母御ははごに似たと見ゆる。気性もしっかり者らしい。良い和子わこだ。なかなか良いところがある」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母御ははごのお身になれば、小金吾どのおひとりが、杖とも柱ともたのみですからな。なるべくご病人の気をいらだてぬように、そばにいておあげなされ」
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
どなたでも意外に思召おぼしめすか存じませぬが、外ならぬ呉一郎殿の実の母御ははごで、先年直方のうがたで不思議の横死おうしげられた千世子殿の事で御座います……さよう……これは誠にしからぬお話で
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
経之つねゆき母御ははごは朝のあいさつを交したあとに、ふしぎそうな面持でいった。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
春彦 そう承われば桂どのが、日ごろ職人をいやしみ嫌い、世にきこえたる殿上人か弓取りならでは、夫に持たぬと誇らるるも、母御ははごの血筋をつたえしため、血は争われぬものでござりまするな。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だが、はっきりそうわかってみれば、思う女の生みの母御ははごなら、この源十郎にとっても義理ある母だ。こりゃ粗略そりゃくには扱われぬ。知らぬこととは言いじょう、いままでの非礼の段々ひらにおゆるしありたい
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「で、母御ははごはその後ちっとはおよろしい方でござるかな」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
母御ははごいか、いか
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
検非違使けびいしの者から小松谷へ知らせがあり、仲時殿はじめ、私たちも、仰天したけれど、かいもくその当時は、母御ははごの藤夜叉さんの方は分らずじまいでした……。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「光悦どのなら、実は自分も面識のある間で、母御ははごの妙秀尼様にもお世話になったことがある」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)