檜舞台ひのきぶたい)” の例文
旧字:檜舞臺
形勢は一変してこれらの「骨董的こっとうてき」な諸現象が新生命を吹き込まれて学界の中心問題として檜舞台ひのきぶたいに押し出されないとも限らない。
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あの、大博覧会の出品ね——県庁から、この錺職かざりやへお声がかりがある位ですもの。美術家の何とか閣が檜舞台ひのきぶたい糶出せりださないはずはないことよ。
しろうとたちでも或る程度までは芝居の真似事まねごとをすることが出来、見物人もその型に依って檜舞台ひのきぶたいの歌舞伎役者を連想しながら見ていられる。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
新式タービンのパリパリが、ビスケー湾の檜舞台ひのきぶたいでヘタバッたり、アラスカ沖の難航で、陸地おかが鼻の先に見えながら、石炭が足りなくなったりする。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だから仕事を奇麗にしまわないうちは、他のことは何も出来なかった。仕事の済んだ後の細工場は檜舞台ひのきぶたいのように奇麗にして、明日の仕事に備えていた。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
若い蘇峰そほうの『国民之友』が思想壇の檜舞台ひのきぶたいとして今の『中央公論』や『改造』よりも重視された頃、春秋二李の特別附録は当時の大家の顔見世かおみせ狂言として盛んに評判されたもんだ。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
とかくは檜舞台ひのきぶたいと見たつるもをかしからずや、あかぬけのせし三十あまりの年増としま、小ざつぱりとせし唐桟とうざんぞろひに紺足袋こんたびはきて、雪駄せつたちやらちやら忙がしげに横抱きの小包はとはでもしるし
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
団十郎だろうが菊五郎きくごろうだろうが、日本広しといえどもおれにまさる役者はないという鼻息だ。何でもこの町を振り出しに、近く東京の檜舞台ひのきぶたいを踏んで、その妙技を天下に紹介するということだった。
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
殊に風采の人目を引いたのは、高柳利三郎といふ新進政事家、すでに檜舞台ひのきぶたいをも踏んで来た男で、今年もまた代議士の候補者に立つといふ。銀之助、文平を始め、男女の教員は一同風琴の側に集つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
書き割りを背にして檜舞台ひのきぶたいを踏んでフートライトを前にして行なって始めて調和すべき演技を不了簡ふりょうけんにもそのままに白日のもと大地の上に持ち出すからである。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それは今日彼の名によって「ラマン効果」と呼ばれるものである。田舎いなかから出て来たばかりの田吾作たごさくが一躍して帝都の檜舞台ひのきぶたいの立て役者になったようなものである。
時事雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)