楫棒かぢぼう)” の例文
すると車の揺れる拍子に炭俵が一つ転げ落ちた。この男はやつと楫棒かぢぼうを下ろし、元のやうに炭俵を積み直した。それは僕にはなんともなかつた。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なに稼業かげふならいではないか、天秤棒てんびんぼうかついだつて楫棒かぢぼうにぎつたつて、だれに、なにきまりがわるいね。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わめくと、楫棒かぢぼうをたゝきげて、車夫しやふ雲雀ひばりと十文字もんじんでげた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
支那人は楫棒かぢぼうを握つた儘、高い二階を見上げましたが、「あすこですか? あすこには、何とかいふ印度人の婆さんが住んでゐます。」と、気味悪さうに返事をすると、匇々そうそう行きさうにするのです。
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
中親仁ちうおやぢだつた。車夫くるまやは、楫棒かぢぼうげたまゝ捻向ねぢむいて
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)