棹立さおだ)” の例文
前も見ず、後も見ず、同勢無二無三に先行を争うので、折々、馬と馬とぶつかり合い、棹立さおだちとなって狂う馬も少なくない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むちを振り上げて丹後守を打とうとした時に、何のはずみか真逆まっさかさまに鞍壺くらつぼからころげ落ちて、馬は棹立さおだちになった。
馬は棹立さおだちになった。そうして二匹とも今度は勘弁ならぬというていいまわし初めた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馬上の人物手綱をしぼり、まずもって馬の両脚を、ピンと棹立さおだてたものである。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、そんな事でなだめられる「東雲しののめ」でなかったのか、それともすれ違いざま、梯子の先が馬の尻に触ったのか、馬はパッと棹立さおだちになると、馬丁べっとうの法被をかなぐり捨てて、奔流のごとく元の道へ。
のどに矢を立てた白馬は、棹立さおだちに躍り上がって、一せいいななくと、どうと横ざまに仆れた。芙蓉ふようの身も、劉備の体も、共に大地へほうり捨てられていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬は驚いて棹立さおだちになって、驀然まっしぐらに表門を駈け出しますと、丁度そこへ王宮から、紅木大臣を追っかけて来た兵隊が往来一パイになって押し寄せて、一度にどっ鯨波ときのこえを挙げました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
そこは赭土あかつちのくずれを見せた崖近くだった。どうっと、たくましい甲冑の全体と、棹立さおだちの馬の影とが、濛々もうもう、土けむりにつつまれたのを見たとき、兵助は早や
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ヒーンと一声棹立さおだちになったと思うと、そのまま一足飛びに駈け出しました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)