染井そめい)” の例文
嶺松寺の廃せられた時、その事にあずかった寺々に問うたが、池田氏の墓には檀家がなかったらしい。当時無縁の墓を遷した所は、染井そめい共同墓地であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
田端たばただの、道灌山どうかんやまだの、染井そめいの墓地だの、巣鴨すがもの監獄だの、護国寺ごこくじだの、——三四郎は新井あらい薬師やくしまでも行った。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
遺骨が新橋に帰着したは五月三十日で、越えて三日葬儀は染井そめい墓地の信照庵に営まれた。会葬するもの数百人。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
あちらの方はあの団子坂の方から染井そめい王子おうじへ行く人で人通りも有りますし……それに店賃たなちんも安いと申すことでございますから、只今では白山へ引越ひっこしまして
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は残り少くなった休暇をせめて一日でも有効に使いいと思って珍らしくも、私の先輩にあたる須永すなが助教授を、染井そめいの家に訪うために、少し遅い朝飯あさはんをしまうと
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
Y君は染井そめいの墓地からという説を出した。私は吉祥寺きちじょうじではないかとも云ってみた。
それでね、死んだおとっつァんのお墓を谷中やなか染井そめい何処どこかへ移さなくっちゃならないんだってね、四、五日前にお寺からお使が来たから、どうしたものかと、その相談に行こうと思ってたのさ。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もうすつかり新緑になりましたね、此頃は毎日染井そめいが思ひ出されます。本当に彼処あすこの晩春から初夏にかけての殊に夕方のよさつたらありませんね、私たちもまた、彼処へかへつてゆきたくなりました。
私信:――野上彌生様へ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
今年は忘れずに染井そめいの菊を見にいきましょうよ
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)