杓子しゃもじ)” の例文
「いや、まじめだよ。この擂粉木と杓子しゃもじの恩を忘れてどうする。おかめひょっとこのように滑稽おどけもの扱いにするのは不届き千万さ。」
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「城太さんが、私たちをお杓子しゃもじですって。——そして、神様なんて拝むのは嫌なこッたっていうんですよ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
杓子しゃもじで攪き廻しながらよくいためて牛乳を一合ばかりして塩胡椒を加えて白ソースを作ります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
近寄って見ると大きな覇王樹さぼてんである。高さは七八尺もあろう、糸瓜へちまほどな青い黄瓜きゅうりを、杓子しゃもじのようにしひしゃげて、の方を下に、上へ上へとあわせたように見える。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
米櫃の蓋をあけると、玉汗はまず杓子しゃもじでご飯を二つに分けて、一方を蓋に移した。それには理由があるのだ。元来、私は大めし喰いなのである。そして、掻っ込む速力がはやい。
酒徒漂泊 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
杓子しゃもじで味噌を出して、鍋の中に入れたのも、ことごとくお夏のやったことに間違いもなく、毒が本当に味噌汁の中にあったとすればお夏の手を一度経たことは疑いもありません。
木鉢きばち杓子しゃもじを始め胡桃くるみの一枚皮で出来たや、山芝で編んだ「びく」即ち背負袋や、しなの木の皮のみのなど、いずれもこの土地あってのものであります。日本の民具を語るよい例となるでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
十分間ほど過ぎてその毛布を退けて茶筒の蓋を明けて見ると中の物がはじの方だけ凍りかけて真中まんなかがドロドロでいますから、杓子しゃもじでよく攪き混ぜてまた蓋をして毛布をかけておきます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「お茶ッぴい! お杓子しゃもじ! 黙ってろい」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)