朱唇しゅしん)” の例文
彼女はわるびれた様子もなく、ジッと眼をつぶっていた。花びらが落ちたような小さなふっくらとした朱唇しゅしんが、ビクビクと痙攣けいれんした。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一すじの道にかかっている自分と武蔵との間をまた忽ち遠くしてしまうものであるにせよ——この男に奔馬ほんばの脚を与えることは断じて出来ないと、朱唇しゅしんを噛んで意思するのであった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朱唇しゅしん白衣びゃくえ白木彫しらきぼりの、み姿の、片扉金具の抜けて、おのずから開いた廚子から拝されて、が捧げたか、花瓶の雪の卯の花が、そのまま、御袖みそでもすそまがいつつ、銑吉が参らせた蝋燭ろうそくの灯に
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ジュリアはすこしあおざめただけだ。さして驚く気色きしょくもなく、化粧鏡をうしろにして、キッと痣蟹を見つめたが、朱唇しゅしんを開き
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
志士的な語気、多感らしい朱唇しゅしんや、きらきらする眼。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妓たちは、朱唇しゅしんをそろえて、まず言い囃す。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)