日枝ひえ)” の例文
去って日枝ひえ神社に詣でると、境内に老杉多く、あわれ幾百年を経たかと見えるのもあった。石段の下に修善寺駐在所がある。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「だってみんなそう云うわよ、あたしだっていつかお日枝ひえ様の山へかみなりが落ちたとき見にいったら、巨きな御神木が裂けて、がりがりひっ掻いたあとがいちめんについているのを見たわよ」
秋の駕籠 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
日枝ひえ神社の山王祭と共に、御用祭又は天下祭と言はれ、かく年に行はれたこの威儀は、氏子うぢこ中の町々を興奮の坩堝るつぼにし、名物の十一本の山車だしが、人波を掻きわけて、警固の金棒の音、木遣きやりの聲
明治十六年の夏、山王さんのう——麹町日枝ひえ神社の大祭のおりのことであった。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
こは諸人のもちいつかまどの神なり。次に大山咋おほやまくひの神。またの名はすゑ大主おほぬしの神。この神は近つ淡海あふみの國の日枝ひえの山にます。また葛野かづのの松の尾にます鳴鏑なりかぶらちたまふ神なり。次に庭津日にはつひの神。
麹町永田町、日枝ひえ神社東鳥居前。小泉亭。
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
二十四年の六月十四日、今年は日枝ひえ神社の本祭りで、わたしの家の近所では軒提灯のきぢょうちんを懸けている朝、わたしは菓子の折をかかえて築地の桜痴居士の家をたずねた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日枝ひえ神社の本祭りで、この町内では踊り屋台を出した。しかし町内には踊る子が揃わないので、誰かの発議でそのころ牛込の赤城下にあった赤城座あかぎざという小芝居の役者を雇うことになった。
ゆず湯 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日枝ひえ神社の本祭りで、この町内では踊り屋台を出した。しかし町内には踊る子が揃わないので、誰かの発議でそのころ牛込うしごめ赤城下あかぎしたにあった赤城座という小芝居の俳優やくしゃを雇うことになった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)