旅稼たびかせぎ)” の例文
想ふに羅馬市には、黄金こがね耳環みゝわを典して、客人をあがなひ取ることををしまざる人あるならん。拿破里ナポリ旅稼たびかせぎは、その後の事とし給はんもさまたげあらじ。
大窪天民は、「客歳かくさい」と云つてあるから文政十年に、加賀から大阪へ旅稼たびかせぎに出たと見える。天民の收入は、江戸に居つても「一日に一分や一分二朱」は取れるのである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
わたしより外の女に関係していないということは、わたし受け合っても好いの。なぜ笑うの。いつかもわたしに打ち明けて話したわ。そら。わたしが諾威ノルウェイ旅稼たびかせぎに行ったでしょう。
旅稼たびかせぎの親子連の者に金を三両ずつもらって頼まれたので、何と申すか其の者の名は知れませんと云うので、いろ/\お調べになったが、親子連れの旅人は更に行方が分りませんゆえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
路先を切って何か始まったから、田舎は田舎だけに古風なことをすると思ってね、旅稼たびかせぎつもりでぐッとお安く真中まんなかへ入ってやろうかと思ってる処へ、お前さんがおいでだから見ていたの。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれど太吉を可愛がった父親てておや旅稼たびかせぎに出てから、一入ひとしお太吉も母を慕った。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此の頃は旅稼たびかせぎの芸人が居るから其れを呼んで気晴しでもして