敵愾てきがい)” の例文
土木は、民意をさかんにさせる。民土にひそむ敵愾てきがい心を、戦いへ総結させるためにもこの際——と秀吉は大規模にそれへ取りかからせた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかりといえどもさらに社会的に観察せんか、彼は時勢の児に外ならず。彼が精神上の父は、敵愾てきがい尊王そんのうの気象にして、その母は国歩こくほ艱難かんなんなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
党派的敵愾てきがい心でないとすれば、もっともたがいに理解していい人々をもたがいに武装さしてる猜疑さいぎ心、などにすぎなかった。
今や老獪ろうかい英帝国はあらん限りの陰険なる策謀を弄して我が国にあらわなる敵愾てきがいを示しつつある。そして日本全国民の対英憤激はその極に登り詰めている。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
内は敵愾てきがいの気を失い、人心は惰弱に風俗は日々頽廃たいはいしつつあるような危殆きたいきわまる国家は、これを救うに武の道をもってするのほか、決して他の術がないとは
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
最近の多くの詩は、この点に於ても全く象徴派に敵愾てきがいしている。あの象徴派のぬらぬらした、メロディアスで柔軟な自由律は、最近詩派の趣味性から手きびしく反感される。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
寅二郎は敵愾てきがいの心も忘れて、嘆賞した。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
敵愾てきがい心を起す。
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
壮志蹉跎さた行われずといえども、護国的精神、敵愾てきがい的気象は、沸々として時勢の児の血管中に煮えあがれり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
私は心の中で友をののしり、それから私の知つてる範囲の、あらゆる人人に対して敵愾てきがいした。何故に人人が、こんなにも意地わるく私にするのか。それが不可解でもあるし、口惜しくもあつた。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
彼の尊王敵愾てきがいの志気は、特に頼襄らいのぼるの国民的詠詩、及び『日本外史』より鼓吹こすいきたれるもの多しとす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)