“摺出(ずりだ)” の例文
時に、当人は、もう蒲団(ふとん)から摺出(ずりだ)して、茶縞(ちゃじま)に浴衣を襲(かさ)ねた寝着(ねまき)の扮装(なり)で、ごつごつして、寒さは寒し、もも尻になって、肩を怒らし、腕組をして、真四角(まっしかく)。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで、連中は、と見ると、いやもう散々の為体(ていたらく)。時間が時間だから、ぐったり疲切って、向うの縁側へ摺出(ずりだ)して、欄干(てすり)に臂(ひじ)を懸けて、夜風に当っているのなどは、まだ確(たしか)な分で。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やっと柵(しがらみ)にかかった海草のように、土方の手に引摺(ひきず)られた古股引(ふるももひき)を、はずすまじとて、媼(ばあ)さんが曲った腰をむずむずと動かして、溝の上へ膝を摺出(ずりだ)す、その効(かい)なく……博多の帯を引掴(ひッつか)みながら
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私も今しがた敷居際の、仕切の壁の角を、摺出(ずりだ)した処ですよ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)