掘割ほりわり)” の例文
ルカー・アレクサンドルィチは、よろめきながらも、さすがに心得たもので、なるたけ掘割ほりわりからはなれようはなれようとしていた。
カシタンカ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
例えば江戸市中の何処どこの所に掘割ほりわりをして通船かよいせん運上うんじょうを取るがよろしいと云う者もあり、又あるい新川しんかわ這入はいる酒に税を課したらかろうとか
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
コオスは掘割ほりわりになっていて、流れはほとんどありません。大体、二千メエトルの長さしかなく、なんども、往復して練習をしました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ひる過ぎになって、空模様は少し穏かになった。雲の重なる間から日脚ひあしさえちょいちょい光を出した。それでも漁船が四五そういつもより早く楼前ろうぜん掘割ほりわりぎ入れて来た。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
若宮八幡わかみやはちまんの森を右手に見て、ぐっと行きつくすと、掘割ほりわりのような川が、十文字に出会って……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
神田上水がお茶の水を過ぎて、柳原河岸にかからうといふ際で、右へ分れてまつすぐ南へ下る掘割ほりわりがある。何といふ名の掘割か知らないが、やがて中洲の裾へそそぐあれである。
地獄 (新字旧仮名) / 神西清(著)
どうでしょう、ちょうど橋がおしまいになったところへ、下水げすいが滝になって、大きな掘割ほりわりに流れこんでいました。それは人間が滝におしながされるとおなじようなきけんなことになっていたのです。
掘割ほりわりをこちらへ来掛かっている。
コオスはほんとうに、草花につつまれているのどかさで、小波さざなみひとつなく、目にみえる流れさえない掘割ほりわりでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
一番から八番まで、舟入りの掘割ほりわりが櫛の歯のようにいりこんでいる岸に、お江戸名物の名も嬉しい首尾の松が思い合った影をまじえて、誰のとも知らぬ小舟が二、三もやってあった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのあひだの掘割ほりわりに、机や小箱などが、ぷかりぷかり浮いてゐるのが物珍らしかつた。美代は身軽に尻はしよりをして、室内の濁流のなかを、きやつきやつ笑ひながら駈けまはつた。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)
宿の下にはかなり大きな掘割ほりわりがあった。それがどうして海へつづいているかちょっと解らなかったが、夕方には漁船が一二そうどこからかぎ寄せて来て、ゆるやかに楼の前を通り過ぎた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)