掏賊すり)” の例文
「ちょいと、どんなことが書いてあって。また掏賊すりを助けたりなんか、不可いけないことをしたのじゃないの。急いで聞かして頂戴な。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ことの起原おこりといふのは、醉漢ゑひどれでも、喧嘩けんくわでもない、意趣斬いしゆぎりでも、竊盜せつたうでも、掏賊すりでもない。むつツばかりの可愛かはいいのが迷兒まひごになつた。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
吃驚びっくりして、這奴等しやつら、田舎ものの風をする掏賊すりか、ポンひきか、と思った。軽くなった懐中ふところにつけても、当節は油断がならぬ。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早瀬 それでなくッてさえ、掏賊すりの同類だ、あいずりだと、新聞ではやされて、そこらに、のめのめ居られるものか。長屋はぬけて、静岡へ駈落かけおちだ。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もとより掏賊すりの用に供するために、自分の持物だった風変りな指環であるから、銀流を懸けろといって滝太が差出したのを、お兼は何条見免みのがすべき。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は掏賊すりだ、はじめから敵に対しては、機謀権略、反間苦肉、あらゆる辣手段らつしゅだんを弄して差支えないと信じた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
掏賊すりの手伝いをしたッて、新聞に出されて、……自分でお役所を辞職した事なんでしょう。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)