こぶし)” の例文
旧字:
それを取り逃がした暁には、自分から恥じて二度と再び主人のこぶしへは帰らない。そこがあの鳥の価値ねうちなのだ。久しく飼い慣らしたあの秋篠あきしのも二度とは帰って参るまい。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
けものがほえるような声をたて、両のこぶしを握りしめ、ぶるぶる震えて、今にもとびかかりそうです。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ニーナ (握りこぶしにした片手を、トリゴーリンのほうへさしのべながら)偶数? 奇数?
外人の大きなこぶしが長いズボンの蔭にブルブルとうなっているのが判った。帆村はジロリと一瞥いちべつしたまま、平然と二人の前を通りすぎた。彼は後の方で、深い二つの吐息といきのするのを聞いた。
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それをふみこたえた瞬間、顔の前に、大きなこぶしが突出された。
傷痕の背景 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そうしてこぶしが握られた。と、寝椅子から立ちあがった。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)