おも)” の例文
蜀山人しょくさんじんの狂歌におけるや全く古今にかんたり。しかしてその始めて狂歌を吟ぜしはおもふに明和めいわ三、四年のこう年二十歳のころなるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おもふに、赤猪子が一生お召を待つてゐたのは大命服従といふ如き道徳観念からのみではなく、天皇に対し一片の心火が燃え続けてゐたためであらう。
枕物狂 (新字旧仮名) / 川田順(著)
おもうに賊はこの異様な衣裳を二つ以上用意して、一つは相川青年に被せて丸の内へ、一つは空っぽのまま桜井家の広間へ運んで置いたものに相違ない。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
芭蕉のいはゆる正風しょうふうを称道したるはおもふに当時俳諧師の品性はなはだ堕落しつづいて俳諧本来の面目たりし軽妙滑稽の意義したがつてはなはだ俗悪野卑に走りしを見て
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おもうにこの幽霊男は、軽微で上品な(変な云い方だが)マゾヒズムと、兇暴なサジズムとを兼備し、その上に、戦慄すべきラスト・マーダラアであったに相違ないのだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おもうに、何者かが書斎に入って、抽斗の鍵で、内側からしまりをしてしまったものであろう。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
松本、佐藤二生の名は毅堂の日録には記載せられていない。おもうに随行の書生であろう。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
つらつらおもふに我国の料理ほど野菜に富めるはなかるべし。西洋にては巴里パリーに赴きて初めて菜蔬さいそあじわい称美すべきものにふといへどもその種類なほ我国の多きに比すべくもあらず。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)