拝眉はいび)” の例文
小生は先般、丸の内倶楽部くらぶ庚戌会こうぼくかいで、短時間拝眉はいびの栄を得ましたもので、貴兄と御同様に九州帝国大学、耳鼻科出身の後輩であります。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし「委細いさい拝眉はいびの上」とあるきりで、はっきりしたことは何も書いてなかった。ただ「次郎の行末とも、自然関係ある儀に付、云々うんぬん
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
朶雲拝誦だうんはいしょう。老兄忽然こつぜんノ御出府、意外驚異つかまつり候。まず以テ御壮健ニ御座ナサレ賀シ奉候。折悪おりあシク昨年来房州ヘ遊歴留守中早速ニ拝眉はいびヲ得ズ、消魂ニ堪ヘズ候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
先頃、柳原土手で、ちらと、お姿を拝したが、仔細しさいあって、わざと、お別れのご挨拶もせずに失礼した。近く、ご拝眉はいびの機を得て、万語ばんごび申しあげるつもり——
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母は机の奥から屑籠をり出した。手紙の断片きれを一つ一つ床から拾って籠の中へ入れる。じ曲げたのを丹念に引き延ばして見る。「いずれ拝眉はいびの上……」と云うのを投げ込む。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
委細は拝眉はいびの日に。三月十九日。治拝。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
近々にご拝眉はいび——と手紙をよこした渋沢栄一は、それから、消息がなく、半年目の翌年三月ごろになって、庄次郎の留守中、屋敷に訪ねて来たということを、彼は、弟からも妻からも聞いた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)