手鑓てやり)” の例文
舟が中流に出てから、庄司は持つてゐた十文目筒もんめづゝ、其外の人々は手鑓てやりを水中に投げた。それから川風の寒いのに、皆着込きごみいで、これも水中に投げた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
白綾しらあや紅裏もみうら打ったる鎧下よろいした色々糸縅いろいろおどしの鎧、小梨打こなしうちかぶと猩々緋しょうじょうひの陣羽織して、手鑓てやりひっさげ、城内に駈入り鑓を合せ、目覚ましく働きて好き首を取ったのは
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
式部手鑓てやりにて真柄が草摺くさずりのはずれ、一鑓にて突きたれど、真柄物ともせず、大太刀をもって払い斬りに斬りたれば、匂坂がかぶとの吹返しを打ち砕き、余る太刀にて鑓を打落す。
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
煤はきや手鑓てやりたてたる雪の上 不玉ふぎょく
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
平八郎の手には高橋、堀井、安田、松本等の与党がゐる。次は渡辺、志村、近藤、深尾、父柏岡等重立おもだつた人々で、ことに平八郎に親しい白井や橋本も此中にゐる。一同着込帯刀きごみたいたうで、多くは手鑓てやりを持つ。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)