手釦てぼたん)” の例文
そこで、卓子にひじをつくと、青く鮮麗あざやか燦然さんぜんとして、異彩を放つ手釦てぼたんの宝石を便たよりに、ともかくもこまを並べて見た。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
立花はめず、おくせず、驚破すわといわば、手釦てぼたん、襟飾を隠して、あらゆるものを見ないでおこうと、胸を据えて、しずか女童めのわらわに従うと、空はらはらと星になったは、雲の切れたのではない。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手を当てるとつめたかった、光が隠れて、たなそこに包まれたのは襟飾えりかざりの小さな宝石、時に別に手首を伝い、雪のカウスに、ちらちらとの間からす月の影、露のこぼれたかと輝いたのは、けだ手釦てぼたんの玉である。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)