手水盥ちょうずだらい)” の例文
娘は手水盥ちょうずだらいに、川から引いた清洌せいれつな水をみ、甲斐かいがいしく虎之助の洗面の世話をしながら、この付近が栗の名産地であることを語った。
内蔵允留守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
文「おっかさまお早う、い天気になりました、お町やお母さまのお床を上げて手水盥ちょうずだらいへ水を汲むのだよ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
蒔絵の手水盥ちょうずだらいを持って来て顔を洗わせてくれた。あさ飯が済むと、このあいだの女がまた出て来た。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それと同時に女は岡田の手に少し血の附いているのを見附けた。「あら、あなたお手がよごれていますわ」と云って、女中を呼んで上り口へ手水盥ちょうずだらいを持って来させた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
絞り染の単衣ひとえ湯巻ゆまきをつけたかいがいしい姿であった。その後から十四、五ばかりの童女が手水盥ちょうずだらいくしを入れて持ってきた。女は背中を流したり、髪を洗ったりして、てきぱきと働いた。
変ったといっても店の体裁ていさいや職人小僧のたぐい、お客の扱いに別に変ったところはなく、「銀床ぎんどこ」という看板、鬢盥びんだらい尻敷板しりしきいた毛受けうけ手水盥ちょうずだらいの類までべつだん世間並みの床屋と変ったことはない。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其のうち店の者が漸く起きて台所へ顔を洗いに来ると一々手水盥ちょうずだらいへ水を汲んで遣り、店の土間を掃いて居るうちに店の者がおまんまべてしまうから、自分が食事を致し
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)