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所帶持
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しよたいもち
世間眼にすれば、どこにも
生活に
苦しんでゐるらしい
様子は
感じられないのであつたが、もとより
切りつめた、
地道な
所帶持などには全くならされてゐない二人にとつては
なまじ
所帶持だなぞと
思ふから
慾が
出ます。かの
彌次郎の
詠める……
可いかい——
飯もまだ
食はず、ぬまずを
打過ぎてひもじき
原の
宿につきけりと、もう——
追つつけ
沼津だ。
バスケツトとも
言はず
外套にあたゝめたのを
取出して、
所帶持は
苦しくつてもこゝらが
重寶の、おかゝのでんぶの
蓋ものを
開けて、さあ、
飮るぞ! トンネルの
暗闇に
彗星でも
出て
見ろと