所天ていしゅ)” の例文
今は姓ですが、母方のほうは李姓ですよ、所天ていしゅくなってから十年になりますが、男の子がないものだから、今にこうしております。
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「そうですとも、とむらいはあんなにしてあるし、何も不足はないはずだが」所天ていしゅはこう云ったあとで、傍にいる後妻のほうを見て
藍微塵の衣服 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お杉は三畳の微暗うすぐら茶室ちゃのまへ出て来て、そこの長火鉢によりかかっている所天ていしゅの長吉に声をかけた。それは十時ごろであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
芝区の某町に質屋があって、そこの女房が五歳いつつ六歳むっつになる女の子を残して病死したので、所天ていしゅは後妻を貰った。
藍微塵の衣服 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ただ女房の藤代のみは、所天ていしゅに別れた悲しみのために、一人の男の子といっしょに寝床へ入ることは入っても睡れなかったので、すぐそれを聞きつけた。
餅を喫う (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
所天ていしゅを大事にしなくちゃならん、その女房が所天をばかにして、品行みもちの悪いことをしよると、家が潰れるのだ
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二人が争っているところへ女の所天ていしゅはじめ隣家となりの者が三四人やって来た。勘作は女を渡して帰って来た。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
所天ていしゅはじめ、舅姑を刺殺し、金銀を奪い取って、家へ火をかけたうえで、浄土宗の坊主と逐電して、坊主はすぐ捕まったが、女房が今もって行方が知れないために
山姑の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「そうか、そうか、しかしお前が来ると、これが恐がるからもう来るな」と所天ていしゅが云った。
藍微塵の衣服 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
実際其の百姓は好人物で女房の好奇的な性癖を満たしてやることができなかったから、女房は他の男によって其の満足を得るようになり、それがこうじて所天ていしゅが厭わしくなって来た。
雀の宮物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「てめえも馬鹿律気ばかりちぎな。だいち死んだ所天ていしゅへ義理をたてて」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「板女は所天ていしゅのようなわかい姝な男を伴れている」
女賊記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)