戦袍ひたたれ)” の例文
この地を立とうとすると、ひとりの若い大将が、白い戦袍ひたたれをつけ、白銀しろがね盔甲かぶとよろいを着て、一隊の軍馬をひきいて、これへ急いで来た。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白銀しろがねよろい、白の戦袍ひたたれを着た大将を先頭にし、約二千ばかりの敵が、どこを渡ってきたか、逆襲してきます。——いや、うしろのほうからです」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このたび討呉の一戦は、義兄あに関羽のとむらい合戦だ。兵船のとばりから武具、旗、甲、戦袍ひたたれの類まで、すべて白となし、白旗白袍はっきはくほうの軍装で出向こうと思う。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「各〻の弓を試みん。柳をへだつこと百歩。あの戦袍ひたたれの赤い心当むねあてを射たものには、すなわちあの戦袍を褒美にとらすであろう。われと思わん者は出て射よ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄金のかぶとに、紅の戦袍ひたたれを着、真っ先に進んできた大将が、鞭をあげて、曹操をさしまねきながら揶揄やゆしていう。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると月明の野面のづらを黒々と一ぴょうの軍馬が殺奔さっぽんしてくる。白き戦袍ひたたれ白銀しろがねよろいは、趙雲にも覚えのある大将である。彼はわれをわすれて、こなたから手を振った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、やっとこれで、すこし人心地がついた」と、将士はゆうべからの濡れ鼠な肌着や戦袍ひたたれを火に乾している。曹操もまた暖を取って後、林の下へ行って坐っていた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
程なく近々と白波をわけて進んでくるのを見ると、その船上には、白い戦袍ひたたれへ銀の甲鎧よろい扮装いでたったすがすがしい若武者が立っていて、しきりと此方こなたへ向って手を打ち振っている。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甘寧は、こんどの𤾂城陥落の際、一番乗りをしたので、きょう祝賀の宴に、呉侯孫権から錦の戦袍ひたたれを拝領し、座中第一の面目をほどこして、いちばん酔いかがやいていたのである。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)