“憫(あは)” の例文
手柄を友次郎に奪はれて、さすがの平次も少し何うかしたのかとでも思ふ樣子で、凝と見詰める眼には、何となく憫(あは)れむやうな色があります。
由来我国人の悟性は遅鈍なり。吾人は只この遅鈍の犠牲たる憫(あは)れむべき女子の既に病院に送られたる事を報道し得るのみ。
而して蜩の小を以て自らその小を知らず、鵬の大を以て自ら其の大を知らず、同じく限に縛せらるゝを知らず欣然として自足するは、憫(あは)れむべき自足なり。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
責めるといふよりも、寧ろそれは憫(あは)れむに近く、静かに、彼女のからだを起して、傍(かたは)らを頤で指しました。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
さう憫(あは)れむやうな調子で云って渡して呉れたのだった。妹が生きて居たとしても行きにくい家だった。
夏蚕時 (新字旧仮名) / 金田千鶴(著)
愛(あい)ちやんは深(ふか)くそれを憫(あは)れに思(おも)ひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
天下に極めて無言なる者あり、山岳之なり、然れども彼は絶大の雄弁家なり、若(も)し言の有無を以て弁の有無を争はゞ、凡(すべ)ての自然は極めて憫(あは)れむべき唖児(あじ)なるべし。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
其線を越ゆること叶(かな)はず、何事にも遮断せらるゝ武権の塀墻(へいしやう)ありて、彼等は声こそは挙げたれ、憫(あは)れむべき卑調の趣味に甘んぜざるを得ざりしは、亦た是非もなき事共なり。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
富めるもの驕(おご)る可からず、貧しきもの何ぞ自ら愧(は)づるを須(もち)ひん。額上の汗は天与の黄金、一粒の米は之れ一粒の玉、何ぞ金殿玉楼の人を羨まむ。唯だ憫(あは)れむべきは食を乞ふの人。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
夕に笑ひしに因て朝に泣くの果を見つ、朝に泣きしに因つて更に又た夕に笑はんとす、斯の如きは憫(あは)れむべし、斯の如きは悲しむべし、斯の如きは厭(いと)ふべし、我れつら/\世相を観ずるに
哀詞序 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
之を以てわれは情死を憫(あは)れむ事切なり。