“憂(うれた)” の例文
峯々に雲がかかっているときは、翁は憂(うれた)げな眼を伏せてはまた開いて眺めた。藍墨の曇りの掃毛目(はけめ)の見える大空から雲は剥(はが)れてまくれ立った。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
真女児は、「我身稚(おさなき)より、人おおき所、或(あるい)は道の長手(ながて)をあゆみては、必ず気のぼりてくるしき病(やまい)あれば、従駕(とも)にぞ出立(いでた)ちはべらぬぞいと憂(うれた)けれ」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
都の人も見ぬを恨(うらみ)に聞え侍るを、我が身稚(をさな)きより、人おほき所、或(ある)は道の長手(ながて)をあゆみては、必ず二五五気(け)のぼりてくるしき病あれば、二五六従駕(みとも)にえ出で立ち侍らぬぞいと憂(うれた)けれ。