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憂
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うれた
峯々に雲がかかっているときは、翁は
憂げな眼を伏せてはまた開いて眺めた。藍墨の曇りの
掃毛目の見える大空から雲は
剥れてまくれ立った。
真女児は、「我身
稚より、人おおき所、
或は道の
長手をあゆみては、必ず気のぼりてくるしき
病あれば、
従駕にぞ
出立ちはべらぬぞいと
憂けれ」
都の人も見ぬを
恨に聞え侍るを、我が身
稚きより、人おほき所、
或は道の
長手をあゆみては、必ず
二五五気のぼりてくるしき病あれば、
二五六従駕にえ出で立ち侍らぬぞいと
憂けれ。