“慈父(じふ)” の例文
しかし、それもそれだが、まったくみじめな、乱世(らんせい)の子供たちの慈父(じふ)となる生涯も、けっして悪い目的ではない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
〔譯〕論語(ろんご)を講(かう)ず、是れ慈父(じふ)の子を教ふる意思(いし)。孟子(まうし)を講ず、是れ伯兄の季(き)を誨(をし)ふる意思(いし)。大學(だいがく)を講ず、網(あみ)の綱(かう)に在る如し。中庸(ちゆうよう)を講ず、雲(くも)の岫(しう)を出づる如し。
加瀬谷少佐は、慈父(じふ)のような温いことばをそこに残して、立ち去った。感激に、また涙を落としている二人の兵のまわりを、萱原准尉その他が取り巻いて、やさしく肩を叩いてやるのが見える。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わかれた慈父(じふ)にめぐり会ったごとく大地にぬかずくもの、おどって狂喜するもの、うれし涙にくれる者などさまざまで、さながらそこは、修羅暗憺(しゅらあんたん)の地獄(じごく)から
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
でいまここに、蛾次郎の顔をみ、竹童のすがたを見ると同時に、宮内(くない)は、湖(みずうみ)をへだてたかなたの戦(いくさ)のことも、きれいに心頭(しんとう)から忘れさって、まことに慈父(じふ)のような温顔(おんがん)になっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)