悪汗わるあせ)” の例文
旧字:惡汗
霜月しもつきの末頃である。一晩、陽気違ひの生暖い風が吹いて、むつと雲が蒸して、火鉢のそばだと半纏はんてんは脱ぎたいまでに、悪汗わるあせにじむやうな、其暮方だつた。
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ビッショリと背すじを濡らす悪汗わるあせをぬぐいながら、さすがの顎十郎も顔色をかえて
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
浮舟さんが燗部屋かんべやさがっていて、七日なぬかばかり腰が立たねえでさ、夏のこッた、湯へへえっちゃあ不可いけねえと固く留められていたのを、悪汗わるあせひどいといって
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たなそこにも、額にも、悪汗わるあせ一ツいたことのない、黒子ほくろも擦傷のあともない、玉のごとき身を投じて、これが歌枕の一室に、蝶吉とふすまを同じゅうする時は、さばかり愛憐の情は燃えながら
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)