悍気かんき)” の例文
高氏の駒、直義の駒、上杉の駒、師直の駒、どれも悍気かんきりんりんな毛づやの映えを見せ、それぞれのタテ髪を鎌倉のさくら若葉が吹きなでていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(この頃、お手に入れた黒鹿毛は、悍気かんきがつよいと仰っしゃって、お乗りにもならずに厩につないであるようですから、あれを差上げてはどうでしょう)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戛然かつぜん——。関羽の偃月えんげつの柄と交叉して、いずれかが折れたかと思われた。逸駿赤兎馬は、主人とともに戦うように、わっと、口をあいて悍気かんきをふるい立てる。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血を見たせいか、馬もにわかに悍気かんきふるい立って、まるで雪神でもけるように、雪風を裂いて走った。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悍気かんきの立った生唼いけずき磨墨するすみも、水面みのもから立つ狂風に吹かれると、たてがみを強く振って、いななきぬいた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬の口輪でもはずしたか、悍気かんきを立てた一頭が、耳、たてがみを打振って、高くいた。あわててそれを叱りながら、組の部将は飛びついて、馬の首をふところへきしめた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きっと、馬の珠目じゅもく眉間みけん)に向かい合って佇立ちょりつし、両手で、口輪をおさえたまま、悍気かんきのつよい秋の若駒をも、大地にすえて、びくとも、れるのは、ゆるさなかった。
軽い速度になって、しきりとたてがみを振りながら、白い泡を口輪に吹いているのは、なお馬が悍気かんきをしずめていない表情である。光春の手綱は、努めてそれをなだめながら歩ませていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老臣の比田帯刀ひだたてわきなのである。帯刀の手はすぐ主人の馬の口輪をつかんでいた。ひとたび、悍気かんきにまかせた馬は容易にその本能を制しきれないもののように、頻りに土を蹴って足掻あがいた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五、六人の悪党が忍びこんで、うまやの赤兎馬を盗みだそうとしたところ、悍気かんきのつよい馬なので、なかの一人が跳ねとばされたらしく、その物音に、みな眼をさまして大騒ぎとなったのだった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信玄のいる帷幕には、彼の一族と甲山の星将とが半日も鳩首きゅうしゅして、その人々が入り代り立代り出はいりしていた。陣外の馬匹までが、ここでは実にやかましいほど、悍気かんきを立てていなないている。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
細長い厩舎きゅうしゃには、悍気かんきのつよい軍馬がたくさん顔をそろえていた。これもみな戦陣の功労者である。秀吉の顔を見ると、わかるのか、怖るるのか、いなないたり、ひづめを鳴らしたり、さわがしいことおびただしい。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さかんに水を掻いている悍気かんきを見てもわかることだった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猛然、赤兎馬は悍気かんき立つ。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)