息張いば)” の例文
監獄にいた時どうだとか云うことを幾度いくども云って、息張いばるかと思えば、泣言を言っている。酒のにおいが胸の悪い程するのである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
実は今になつて見ると、息張いばつて車に乗つて晩の見物に来た富豪が、心の内で現に場内の暖い席にゐる貧乏人を羨んでゐる。
防火栓 (新字旧仮名) / ゲオルヒ・ヒルシュフェルド(著)
「持主が息張いばつてゐるのは無理もないね、兎に角ロシアで鰐を持つてゐる人は、目下この人の外ないのだから。」
「己はもう出て行くからこんな所に用は無い」と、壁に向つて息張いばつてゐると云ふ風である。
駆落 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
如何いかにも立派な、品の好い人柄であつたので、初め思つた倍の物を遣りながら、それを息張いばつて遣るどころではなく、実際まだこれでは余り少ないと、恥かしく思つたのである。
大時計の傍には番人が驚き呆れながら矢張息張いばつて、ゆつくりと煙草を喫んでゐた。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
「お前さんは息張いばっているから行けない。つい這入って行けば好いに。」
(新字新仮名) / ウィルヘルム・シュミットボン(著)
またこんな人間もいるだろう。其奴そいつはきょうあたり大丈夫で、息張いばって歩いている。ところが詰まらない、偶然の出来事で、此奴こいつは一二週間の内に死んでしまうのだ。そのくせ死という事なんぞを
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
どんなにこっちで息張いばっても、仮装の衣裳を
玄間は三沢氏で阿部家の医官であつた。「御医者」になつて息張いばると云ふのは、町医から阿部家に召し抱へられたものか。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
判事はただ厚い布団の上に息張いばっている。
「分からないね。箕村というのは誰だい。それにお梅さんという人はどうしてそんなに息張いばっているのだい。」
独身 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
変物奴かわりものめ息張いばって行って見るがい。
そこにドイツの強みがある。それでドイツは世界に羽をのして、息張いばっていることが出来る。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)