怯者きょうしゃ)” の例文
昨日の怯者きょうしゃは今日の勇者となり、迫害に屈せず死を恐れず、イエスの福音を広く世に宣べ伝えて、基督教会の基礎をつくった。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
こうなると、つねの怯者きょうしゃ勇士ゆうしになるものだ。伊部熊蔵いのべくまぞうはカッといかって、中断ちゅうだんされたなわのはしから千ぼんびさしくさりにすがって、ダッ——と源氏げんじへ飛びこんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「実地にやったことはないのじゃ、なれども、宮内は固く思っている、すわというとき、宮内は決して怯者きょうしゃでない、むしろ大胆不敵の男になれる、如何ばかりの勇士でも、宮内は必ず仕止めてみせる」
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
おびただしい血しおを見、血のにおいに吹かれて、彼らは酒蔵さかぐらへ入ったように血に酔っていた。血の中に立つと、勇者は常よりも冷静になるし、怯者きょうしゃはその反対になる。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
落魄流寓らくはくりゅうぐう時代のひがみもある。信長に庇護ひごされて二条に立ったという、日ごろの気がねも勃然ぼつぜんと反撥する。——怯者きょうしゃの怒りは、時によると、盲目的に、すて鉢をあらわすものである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、貞盛とて、こうなれば、やみやみ坐して敵手にかかるほど怯者きょうしゃでもない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)