“忿怒(いかり)” の例文
「汝らもし我らいかに彼を攻めんかと言い、また事の根われにありと言わば剣(つるぎ)を懼(おそ)れよ、忿怒(いかり)は剣の罰を来(きた)らす、かく汝ら遂に審判(さばき)のあるを知らん」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
斯の亂暴な行ひは直に小さな姪のいたづらと知れましたが、そのために自分の忿怒(いかり)を奈何(どう)することも出來ませんでした。私はその帳面を引裂いて了ひました。
……存じてもおろうが、紀州侯は、諸事ご厳格な方であらせられるから、このようなことがお耳に入ったら、お忿怒(いかり)もさぞかし、とても、二人や三人の腹切りではあいすむまい。
虎之助は黙っていた、黙ってはいたが、衝き上げてくる忿怒(いかり)の血はどうしようもなかった。彼等の現われる直前に起こった烈しい自責の念は、そのはけ口を求めていたようなものである。
内蔵允留守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
けれど女の足でどうしてこれに追いつくことができよう。欺かれたと知って、忿怒(いかり)がたちまち心頭を衝(つ)いて起こった。お作は小石を拾ってあとから投げた。一つが旅商人の背中に当たった。
ネギ一束 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
と磨いて礪(と)いで礪ぎ出した純粋(きつすゐ)江戸ッ子粘り気無し、一(ぴん)で無ければ六と出る、忿怒(いかり)の裏の温和(やさし)さも飽まで強き源太が言葉に、身動(じろ)ぎさへせで聞き居し十兵衞、何も云はず畳に食ひつき、親方
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
姉と一緒に居た間、私は殆んど忿怒(いかり)といふものも知らなかつたほど自分の少年らしい性質が延びて行つたことを感じます。甥の下にはまだ頑是(ぐわんぜ)ない年頃の姪が一人ありました。
続いて、十四の時、知らぬ旅客の背中に石を投げつけたと同じような忿怒(いかり)をはげしく心頭に起こした。けれど泣いたり、怒(おこ)ったりしただけでは、その終わりを告げることはもうできなかった。
ネギ一束 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
と磨(みが)いて礪(と)いで礪ぎ出した純粋(きっすい)江戸ッ子粘り気なし、一(ぴん)でなければ六と出る、忿怒(いかり)の裏の温和(やさし)さもあくまで強き源太が言葉に、身動(みじろ)ぎさえせで聞きいし十兵衛、何も云わず畳に食いつき、親方
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
香苗はつきあげてくる忿怒(いかり)を懸命に堪えながら
城中の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
剣(つるぎ)を懼(おそ)れよ、忿怒(いかり)は剣の罰を来(きた)らす
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
彼は悄れた節子を見て、取返しのつかないような結果に成ったことを聞いて、初めて羞(は)じることを知ったその自分の心根を羞じた。彼は節子の両親の忿怒(いかり)の前に、自分を持って行って考えて見た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)