心胆しんたん)” の例文
ロンドンでリッパア騒動が終塞しゅうそくするとまもなく、その翌年の初夏、同じような悪鬼的横行おうこうが今度はマナガ市の心胆しんたんを寒からしめている。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
だますに事を欠いて、涙をもって男の情をほだし、義をかりて武士の心胆しんたんをあざむき去った滝川三郎兵衛を討ってその首を見ることである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次いで白髥橋下の獄門舟事件と前代未聞の残虐に世人せじん心胆しんたんさむからしめた怪賊は、更らに毒手を伸ばして
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「いかさま、これは革命者の心胆しんたんほとばしりだ。世をのろうやつの声だ。鄆城県うんじょうけんの人、宋江とは一体だれだろう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、この出来事は、すっかりモスタアとダグラスの心胆しんたんを寒からしめたものとみえる。彼らはいよいよ危険を感知して、その夜のうちに狼狽あわてて陸へあがったらしい。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
彼は心胆しんたんるため、毎夜、細糸を以って白刃を天井につるし、その下に眠るのを常としたという。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一能に達した者は万芸に達しるという言葉もあろう。武はわざでなく、心胆しんたんのものだ。心胆を深く養えば、世間を観る眼、人間をる眼、学問の道、経世けいせいの道、すべてに通じ得るものだ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
剣のあつかい、間あい、心胆しんたんの工夫をした達人はすくなしとしない。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)