御鴻恩ごこうおん)” の例文
「なんの、なんの、迷惑どころか願ったりかなったりではござりまするが、危いところを助けて戴きましたその上に、またそのような御鴻恩ごこうおんに預りましては——。」
それよりも、われわれが身命を賭して土佐兵を撃ち退け、徳川家長久のもといを成せば、お家繁盛のためにもなり、御先祖以来の御鴻恩ごこうおんに報いることにもなるではないか。
仇討禁止令 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「はや、おわかれも、今夕こんせきにせまりました。……多年の御鴻恩ごこうおん、あらためて、お礼申しあげまする」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あなたの御蔭で私は起死回生の思いを致しました。御鴻恩ごこうおんは死んでも忘却致しませぬ」
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わっちの一つ長家にいる娘で、先達せんだって親が死んで、親類もなく、何処どこへ往っても置いてくれまい、旦那には御鴻恩ごこうおんになってお慈悲深いから、旦那の処へ御膳炊きに来たいと云います
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御鴻恩ごこうおんにて、御地を賜り、道場一軒なりと、開かせいただかばかたじけなく——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
義経、不徳のため、鎌倉どのの譴責けんせきをこうむり、今日、鎮西ちんぜいに落ちて参りまする。思えば、きょうまでの御鴻恩ごこうおんは海のごとく、微臣の奉公は一つぶの粟だにも足りません。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将軍家平素の御鴻恩ごこうおんに報ゆるはこのとき、なんとかして日光御下命の栄典に浴したいものじゃと、日夜神仏に祈願、ほんとでござる、水垢離みずごりまでとってねがっておりましたにかかわらず
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)