御寮人ごりょうにん)” の例文
二軒茶屋の床几しょうぎへ茶代を置いて、こういいながら、あわてて、後を追ってきた手代てだいふうの男と、そして、三十がらみの商家の御寮人ごりょうにん
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ、四ツをちょっと過ぎたばかりなので、客の顔ぶれは近所のご隠居体なのや、根岸あたりの寮へ来ている商家の御寮人ごりょうにんや高島田の娘。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
鵙屋の御寮人ごりょうにんすなわち春琴の母のしげ女がふと厠に起きてどこからともなく洩れて来る「雪」の曲を聞いたのである。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ねえ、御寮人ごりょうにんさん——名さえまだうかがわないが、こんなことになった以上、お互に何もかも底を割った方がよいと思うゆえ、くことを、はっきり答えて貰いたいけれど——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
桃葉湯とうようとう丁稚でっちつれたる御寮人ごりょうにん
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
けれどもこの時御寮人ごりょうにんの前へ呼ばれた佐助の態度がオドオドして胡散臭うさんくさいのに不審が加わりめて行くと辻褄つじつまの合わないことが出て来て実はそれを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
石段へかかると、女は日傘をたたみ、男は菅笠すげがさひもを解いて、清々すがすがしい新緑を仰いだ。参詣をすまして戻ってゆく御寮人ごりょうにんの手には、名産の花塩はなじおがたいがいげられている。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このやしきもいずれそういう物持の別荘なのであの琴をひいた女はこの家の御寮人ごりょうにんでござりましょう
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
伊織は、振向いて、御寮人ごりょうにんと娘の顔をじっと見た。まだどこか、眼がうつろなのだった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのほかの態度やものごしなどがいかにも大家の御寮人ごりょうにんらしくおうようだったのかも知れませぬ。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
……まあ旦那のほうで仰っしゃるから、あけすけに言っちまいますが、陽穀ようこく県一の薬種問屋くすりどんや、西門大郎の御寮人ごりょうにんにしては、亡くなったおくさんは、余り良妻じゃなかったんですってね
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私かてどない御寮人ごりょうにんさんに叱られまッか分れしまへんさかい、電話かけんと置きましたんだす。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なアるほど女ですね。女も女、すてきな別嬪べっぴんさ。してみると金持の御寮人ごりょうにん様かな。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気をのまれて、藤次が、いわれた通りにしてゆくと、風呂場の次の小間で、朱実の髪をなでつけていたお甲がどこの御寮人ごりょうにんかとばかり、こってり盛装したすがたをすぐその後から見せて
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おばさん、おばさんって、呼ぶのは、おかしいから、お母さんのことは、御寮人ごりょうにんさまとお呼び。わたしのことは、お嬢さんと呼ぶんですよ。——今から癖をつけておかないといけないからね」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「加藤様の御寮人ごりょうにんではございませぬか。どちらへお越しなされますな」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、ことばに甘えよう。わしに会いたいとは、この家の御寮人ごりょうにんか」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もしやあなたは、川長の御寮人ごりょうにん様ではございませんか」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もし、御寮人ごりょうにんさま」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)