御召縮緬おめしちりめん)” の例文
隣りの細君が御召縮緬おめしちりめんに純金のかんざしをと聞きて大いに心を悩まし、急に我もと注文して後によくよく吟味すれば、あに計らんや、隣家の品は綿縮緬に鍍金めっきなりしとぞ。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その人はよはひ六十路むそぢ余にかたふきて、顔はしわみたれど膚清はだへきよく、切髪きりがみかたちなどなかなかよしありげにて、風俗も見苦からず、ただ異様なるは茶微塵ちやみじん御召縮緬おめしちりめん被風ひふをも着ながら
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その店さきに下った双子縞ふたごじま唐桟柄とうざんがら御召縮緬おめしちりめん。——黒八のいろのさえた半纏はんてん、むきみや、丹前。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
鼠色の御召縮緬おめしちりめんに黄柄茶の糸を以て細く小さく碁盤格子を織いだしたる上着、……帯は古風な本国織ほんごくおりに紺博多はかた独鈷とっこなし媚茶の二本筋を織たるとを腹合せに縫ひたるを結び
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
へだてふすまを明けて這入った人の扮装なりはじゃがらっぽいしまの小袖にて、まア其の頃は御召縮緬おめしちりめんが相場で、頭髪あたまは達磨返しに、一寸した玉の附いたかんざし散斑ばらふのきれたくしを横の方へよけて揷しており
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)