御使みつかい)” の例文
「では、あくまで其許そこは、朝廷と尊氏と和せというのか。そして、その御使みつかいには、自分が尊氏を説きに筑紫つくしへ行ってもよいとまで望むのか」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一同讃美歌の「やゝにうつり行く夕日かげの、残るわがいのち、いまか消ゆらん。御使みつかいよ、つばさをのべ、とこしえのふるさとに、つれゆきてよ、……」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ソーニャ ほっと息がつけるんだわ! その時、わたしたちの耳には、神さまの御使みつかいたちの声がひびいて、空一面きらきらしたダイヤモンドでいっぱいになる。
そして僕にはほとんどこの愛が、たとい諸々もろもろ国人くにびとの言葉と御使みつかいの言葉とを語りとも、もし愛なくば鳴る鐘、響く鐃鈸にょうはちのごとしと書いてある、あの愛と同じものであるように思われるのです。
御使みつかいよ。
「かかる山家へ、みかどの御使みつかいとは恐懼きょうくにたえません。そも、何事でございましょうか。ごらんのような、名もなき、田舎いなか武門のあるじなどへ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……いかがなされまするな。御使みつかいひつ大外記だいげきは、否やのお返辞を持ち帰りたいよしで、お待ちしておりまするが」
「されば、御使みつかいなくとも、つとにわれから上洛すべきでしたが、戦後なお鎌倉は乱離らんりの状です。なにとぞ、ここ数日のご猶予をばお願い申しあげまする」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「良忠。——御使みつかいへは、こうお答えせい。不時のお召、少々は手間どるかもしれませぬが、おそくも宵過ぎぬうち、きっと参内つかまつりまする、と」
……それにせよ、尊氏が返答如何いかにと、重き御使みつかいを胸につかえておられたのでは、心から東景色あずまげしきもお楽しみのお眼には入るまい。その儀はどうぞ御安堵ごあんどあって
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやこれらの股肱ここうの者のほかに、西下途中のむろへ、持明院統の院宣をもたらして来て尊氏にそれをさずけた光厳院の御使みつかい、三宝院ノ賢俊けんしゅんもそのうちに立ちまじっていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんの、さような辞をたずさえて、むなしゅう笠置へ帰れようか。花や歌の御使みつかいではなし」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
剣璽けんじ(剣と鏡と天子の印)は、一条ノ右中将実益さねます揚梅あげうめノ右少将資持すけもちらがささげて、御使みつかいにたち、沿道には、折ふし入京していた近江の佐々木道誉どうよの兵が、例の、派手やかな軍装で立ちならんだ。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「梁中書の御使みつかいの者ども、都をさして、ただいま、ご城門を通ります」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)