強談ごうだん)” の例文
買い過ぎて、呉服屋へ借金のかさんだ女へ、その呉服屋に代わって、払いの強談ごうだんを持ちこんでやるのだが、愚かな女だ。首もまわらぬらしい
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ただ、何の事は無い、「素人で左様そう釣っては、商売人の顔を踏み付けた仕打ちだ、大抵好い加減に釣ってれば好いに」という、強談ごうだんなのです。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
と無理強談ごうだん折柄おりから暮方くれかたの木蔭よりむっくり黒山の如き大熊が現われ出でゝ、蟠龍軒が振上げた手首をむんずと引ッつかみ、どうとかたえに引倒しました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
娘を返せと強談ごうだんすると、——あの音次郎の奴が、いかにも、お崎はお前の娘のお染に相違ないが、いつかはお前にさとられるだろうと思って、遠方へ
盗難にでもかかったかのごとくに思ってるらしい主人がいかに軍隊の歓迎だと云って、いかに華族様の勧誘だと云って、強談ごうだんで持ちかけたらいざ知らず
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
嫁にと強談ごうだん致してまいった奴じゃ。それを手きびしくねつけられたので、さてこそ左様な狼藉を加えたのであろう。おのにっくき佞者しれものめ、隣藩の指南番とて用捨なろうか
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人橋を架け、黄金の雨を降らせての強談ごうだん、私も斯んな弱い稼業をして居る身体で、これには全く弱り入りました。
ともかく珊瑚が戻ったのだから、今度だけは内済にして、そのうえ別に強談ごうだんもしなかったという。あの内儀おかみがゆうべ自殺したと聞いて、番頭は不思議そうな顔をしていた。
宇陀うだ浅間山せんげんやま北條彦五郎ほうじょうひこごろうという泥坊が隠れていて、是は二十五人も手下の者が有るので、合力ごうりょくという名を附けて居廻いまわりの豪家ごうかや寺院へ強談ごうだんに歩き、沢山な金を奪い取るので
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
足軽の主人という武士が、桶大工おけだいくの新左衛門の家へ、何度となく強談ごうだんに来て
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下手人を出さなければ、本日正午しょううまこく、龍の口評定所へ訴え出るという強談ごうだんじゃ。——主家の安危には替え難い、拙者いさぎよく名乗って出ようと思う。
「お千勢はしっかり者ですから、いつまでも若旦那の慰みものになっているはずはありません。嫁にしてくれとかなんとか手詰の強談ごうだんを持ち込んだのでしょう」
「浜坊は根が利巧だから、うんと言いませんよ。しびれを切らした宇佐美敬太郎、とうとうお浜坊のお湯の帰りを待ち伏せて、胸倉を掴んで、刀まで抜いての強談ごうだんだ」
「妹のお春を奉公によこすか、金の茶釜と一緒に見世物に顔を貸すか、二つに一つの強談ごうだんです」
五左衛門に二百両の金を返して、お秋をすぐにも返してくれと強談ごうだんしました。私は泣いたり、怨んだり、脅かしたり、とうとう持って行った脇差まで抜いて、畳に突き立てて責めました。
それを返すかお袖を引渡すかという強談ごうだんになりました。