引釣ひッつ)” の例文
スポンと栓を抜く、くだんせきばらいを一つすると、これと同時に、鼻がとがり、眉が引釣ひッつり、額のしわくびれるかとへこむや、まなこが光る。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
聞くと、筋も身を引釣ひッつった、私は。日暮に谷中の坂で聞いた、と同じじゃないか。もっとも、年寄りは誰某だれそれと人をめないと、どの声も似てはいるが。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この山代の湯ぐらいではらちあかねえさ。脚気かっけ山中やまなか、かさ粟津あわづの湯へ、七日湯治をしねえ事には半月十日寝られねえで、身体からだ掻毟かきむしって、目が引釣ひッつり上る若旦那でね。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……自分の情婦いろ。……ええたまらん、俺の前でお孝の事を。……うう、筋が引釣ひッつる、身体が震える。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)