引断ひっき)” の例文
旧字:引斷
片頬かたほに触れた柳の葉先を、お品はそのつややかに黒い前歯でくわえて、くようにして引断ひっきった。青い葉を、カチカチと二ツばかりんで手に取って、てのひらに載せて見た。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
綱を増したいかり引断ひっきられてしまい、唯一の帆柱でさえも、目通りのあたりから切り折られてしまった坊主船は、真黒な海の中で、跳ね上げられたり、打ち落されたり、右左にいいように揉み立てられ
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうかと思うと、時にゃがらりと巫山戯ふざけ出して、肩へつかまる、羽織の紐を引断ひっきる、膝をつ、くすぐる。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余りの事にぼうとなって、その時座を避けようとする、道子の帯の結目むすびめを、引断ひっきれよ、と引いたので、横ざまに倒れたもすそあおり、のあたりから波打って、炎に燃えつと見えたのは
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)