引出ひきい)” の例文
その翌日よくじつも、むなしく蒼渺さうびやうたる大海原おほうなばら表面ひやうめんながむるばかりで、たゞわが端艇たんてい沙魚ふかためまへ潮流てうりう引出ひきいだされ、いまかへつ反對流はんたいりうとて、今度こんど西南せいなんから東方とうほうむか
に入りて四辺あたりしづかになるにつれ、お村が悲喚ひくわんの声えて眠りがたきに、旗野の主人も堪兼たまりかね、「あら煩悩うるさし、いで息の根を止めむず」と藪の中に走入はしりいり、半死半生の婦人をんな引出ひきいだせば
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)