引付ひきつ)” の例文
あくる朝、駅路うまやじの物音に眼を覚した半十郎、フト床の側に引付ひきつけて置いた筈の、振り分けの荷物を見て驚きました。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
一頃は弘もよく引付ひきつけたりなどしたが、お婆さん始め皆の丹精たんせいでずんずん成長しとなって、めっきりと強壮じょうぶそうに成った。おまけに、末頼もしい賢さを見せている。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
顔のあたりに垂れているのであった、私はそれを見ると、突然何かに襲われた様に、慄然ぞっとして、五六けん大跨おおまた足取あしどりすこぶたしかに歩いたが、何か後方うしろから引付ひきつけられるような気がしたので
青銅鬼 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
しかういふものか此時このときばかり、わたしこころめう其方そつち引付ひきつけられた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
年齢のへだたりを越えて、若い少女の心を引付ひきつけたのは別として、多くの場合それは、不純な動機や事情で結び付けられるのが普通で、国府金弥老人と鈴子夫人の間にも、面白からぬ噂があり