廬山ろざん)” の例文
廬山ろざんのみなみ、懸崖けんがい千尺の下は大江に臨んでいる。その崖の半途に藤蔓ふじづるのまとった古木があって、その上に四つの蜂の巣がある。
蕪湖から乗った南陽丸では、竹内栖鳳たけうちせいほう氏の一行と一しょだった。栖鳳氏も九江キュウキャンに下船の上、廬山ろざんに登る事になっていたから、私は令息、——どうも可笑しい。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
廬山ろざんに入つては廬山を見ず、まして、病身もので、めつたに外出しない筆者のことだから、大きなことは言へぬけれど、どうも名古屋は近代化しにくい性質らしい。
名古屋スケッチ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
彼女は、廬山ろざんの向う側の星子せいしという土地から、この浮梁の窯業場かまばへ、働きに来ていた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「君は知つとるか知らないが、往時むかし支那の廬山ろざんに何とか言つた医者があつた……」
李太白の廬山ろざんの瀑布を望む詩の句にも、仰ぎ觀れば勢うたゝ雄なり、さかんなるかな造化の功、といつてゐるが、瀑布の畫を描けば大抵李太白は點景人物になつてゐるほど瀑布好たきずきの詩人で、自分からも
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そそり立つ廬山ろざんに向つて無言に並ぶ野砲の列
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
寧ろ廬山ろざんの峰々のやうに、種々の立ち場から鑑賞され得る多面性を具へてゐるのであらう。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
汝ら、生をうけて、何ぞこの狭隘きょうあい山谷さんこくに、雲と児戯するや。雲すでに起つ、雲にせよ。行くこと西方三千里、廬山ろざんに臥し峨眉峰がびほうを指さし、足を長江にすすぎ、気を大世界に吸う。生命真に伸ぶべし。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むし廬山ろざん峯々みねみねのように、種々の立ち場から鑑賞され得る多面性を具えているのであろう。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし今は日本に、——炎暑の甚しい東京に汪洋おうようたる長江を懐しがっている。長江を? ——いや、長江ばかりではない、蕪湖ウウフウを、漢口ハンカオを、廬山ろざんの松を、洞庭どうていの波を懐しがっている。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)