庵主あんじゅ)” の例文
庵主あんじゅさんは、よそゆきの茶色ちゃいろのけさをて、かねのまえにつと、にもっているちいさいかねをちーんとたたいて、おきょうみはじめた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
所伝によれば、身の孤独と、世のすさびに、すべてを見失った十六のおとめは、この地で黒髪をおろして一庵主あんじゅとしてついに果てられたというのである。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庵主あんじゅは、魚面人身ぎょめんじんしん、よく幻術を行のうて、存亡自在、冬、雷を起こし、夏、氷を造り、飛者とりを走らしめ、走者けものを飛ばしめるといううわさである。悟浄はこの道人に月仕えた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「これは街で、庵主あんじゅさまのお名前を教えられてきたものでございます」
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鐘供養かねくようというのは、どんなことをするのかとおもっていたら、ごんごろがねまえ線香せんこうてて庵主あんじゅさんがおきょうをあげることであった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
大人おとなたちは、やれやれ、といったかおつきをした。みんな、庵主あんじゅさんがしようのない頑固者がんこものであることをっていたからだ。しかし庵主あんじゅさんのいうことも道理どうりであった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)