年頭としがしら)” の例文
「この間、或寄合あるよりあいで一緒になったら、わしは六十二だから見渡したところ一番年頭としがしらだと言って、上座につわっている。馬鹿だよ、彼奴は」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
羅宇屋煙管きせるの五郎八が、三十一の年頭としがしら、江戸の七が二十二、四番目と五番目のいたちと丹三郎が、同じ年の十六だった。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年頭としがしらだけにそう言うと、ぐずぐず言いながら、「君、ちょいと失礼します。」と言って、また大きな口を開けながら、長長と歌いはじめるのであった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
目前に加茂川の清い流れのせせらぎを耳にしつつ、どうやら眼の覚めて、用意の控えの座敷に直ったとき、にこにこ、ぞろぞろ這入ってきた紅裙こうくんさんたちの年頭としがしらが言う
夏日小味 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
乾児の中で年頭としがしらでもあり、一番兄分でもある自分が、入れ札に落ちることは——自分の信望が少しも無いことがまざまざと表われることは、もう既定の事実のように、九郎助には思われた。
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「番頭さんか、お前さんは年頭としがしらだ、もしやと思う事があったら言うがいい」
たえず彼の側にある小姓組のうちでは、脇坂甚内安治やすはるの三十歳が年頭としがしらで、次が助作の二十八歳であった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この中には、和蘭渡おらんだわたり赤酒せきしゆがある。ほんの少しばかりだが、その味の良さといふものは、本當にこれこそ天の美祿といふものだらう。ほんの一杯づつだが、皆んなにわけて進ぜ度い。さア、年頭としがしらの七平から」
とこれで一番の年頭としがしらが分った。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何事か知れないが、白井与三左衛門は多年仕えてくれた家の子のうちでも年頭としがしらの方である。宗治はすぐ矢倉へ上って行った。与三左衛門はうれしげに、主人の姿を、そこの不断の戦いの場所に迎えた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この中には、和蘭オランダ渡りの赤酒せきしゅがある。ほんの少しばかりだが、その味の良さというものは、本当にこれこそ天の美禄というものだろう。ほんの一杯ずつだが、皆んなにわけて進ぜたい。さア、年頭としがしらの七平から」