平場ひらば)” の例文
平場ひらばの一番後ろで、たかしが左の端、中へ姉が来て、信子が右の端、後ろへ兄が座った。ちょうど幕間まくあいで、階下は七分通り詰まっていた。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
澪だの平場ひらばだので釣れない時にかかり前に行くということは誰もすること。またわざわざかかりへ行きたがる人もある位。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「お芳さんがあすこに立っていたから、行って見てきましたの。いい塩梅あんばい平場ひらばの前の方を融通してくれたんですよ」
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「此の次ぎは、城こわれたれば、平場ひらばいくさなるべし。われ天王寺表へ乗出し、この馬の息続かん程は、戦って討死せんと思うにつけ、一入ひとしお秘蔵のものに候」
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
さあれ、義貞は戦上手、わけて平場ひらばは彼の得意だ、勢いにつられて深入りすな。特に兵力を分散するな。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法廷の平場ひらばにいる人々は、誰に迷惑をかけようとも彼を一目見てやろうと、前にいる人々の肩に手をかけ、——彼の姿をどこからどこまで見ようと、足を爪立てて立ったり
平場ひらばの椅子席に腰掛けてゐた私は、苦難に充ちた氏の将来を予見した訳ではないが、「今夜の小山内君こそは一世一代の男振りだ、こんな時はそんなに度々あるものではないぞ」
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一方前の平場ひらばへは、被告人、菱沼さん、と云った風に、ま、昨日きのうの公判廷と同じような顔触れが揃ったんです……もっとも菱沼さんはひどくそわそわして辺りを見廻してばかりいましたがね……
あやつり裁判 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
丘の向う裏から廻って、開いた平場ひらばを寄ったのである。
野心ある客にはたびたびは出せず、自然色気ぬきの平場ひらばということになり、いくらかのんびりしていられるので、読もうと思えば本も読めないことはなかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
だから平場ひらばの戦いでは、毛利は到底、陶の敵ではない。そこで元就が考えたのは、厳島に築城する事だ。
厳島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)