常陸山ひたちやま)” の例文
槍ヶ岳対穂高岳は、常陸山ひたちやま対梅ヶ谷というも、あながち無理はなかろう、前者の傲然てる、後者の裕容迫らざるところ、よく似ている。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
常陸山ひたちやま、梅ヶ谷、大砲などもいたような気がする。同郷の学生たち一同とともに同郷の力士国見山のためにひそかに力こぶを入れて見物したものである。
相撲 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
矢田部先生が、常陸山ひたちやまであるならば、私はふんどしかつぎであるから、相撲としても申分のない対手だった。
太閤様たいこうさま正成まさしげとどっちが偉いとか、ワシントンとナポレオンとどっちが強いとか、常陸山ひたちやまと弁慶と相撲すもうを取ったらどっちが勝つとか、中には返答に困らないのもあるが
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
少年時代に、うめたに常陸山ひたちやまの角力を見た切り、さつぱり角力を見たことのない彼は、つまらなそうに土俵を見ていたけれど、幕内の土俵入りの時早くも彼は天竜を見て
殺人鬼 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
大砲おほづつは僕等の小学時代に、——常陸山ひたちやまうめたにの大関だつた時代に横綱を張つた相撲すまふだつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
梅ヶ谷と常陸山とどつちが好きかと問ふと、常陸山ひたちやまが好きぢやといふ人が十の八、九である。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
相撲すもうもまた土地がらだけに大勢近所に住まっていた。現に僕のうちの裏の向こうは年寄りの峯岸みねぎしの家だったものである。僕の小学校にいた時代はちょうど常陸山ひたちやまや梅ヶ谷の全盛をきわめた時代だった。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)