帯刀たいとう)” の例文
旧字:帶刀
町人ながら諸大名の御用達を勤め、苗字みょうじ帯刀たいとうまで許されている玉屋金兵衛は、五十がらみの分別顔を心持かげらせてこう切出しました。
名主には帯刀たいとうごめんとそうでないのとの二つがあったが、僕の父親はどっちだったか忘れてしまった。
僕の昔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
中津なかつ奥平おくだいら藩士はんしの数、かみ大臣たいしんよりしも帯刀たいとうの者ととなうるものに至るまで、およそ、千五百名。その身分役名を精細にわかてば百余級の多きに至れども、これを大別たいべつして二等に分つべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼がその帯刀たいとうさまよりそのまげの結い風にまで、肥後流の質樸にして剛健なるを愛し、みずからこれを模したる如きは、暫らく余事として、彼が江戸の死獄よりして、書を同志に送り
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
其方そのほう儀、御勝手おかって御仕法立てにつき、頼母子講たのもしこう御世話かた格別に存じ入り、小前こまえさとし方も行き届き、その上、自身にも別段御奉公申し上げ、奇特の事にそうろう。よって、一代苗字みょうじ帯刀たいとう御免なし下され候。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すなわち上等は儒者、医師、小姓組こしょうぐみより大臣たいしんに至り、下等は祐筆ゆうひつ中小姓なかごしょう(旧厩格)供小姓ともごしょう小役人こやくにん格より足軽あしがる帯刀たいとうの者に至り、その数の割合、上等はおよそ下等の三分一なり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)