差別しやべつ)” の例文
要するに家塾を譲ると云ふことと、菅氏を名乗らせて阿部家に仕へさせると云ふこととの間には、初より劃然とした差別しやべつがしであつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そのかぞへざりし奇遇とゆめみざりし差別しやべつとは、咄々とつとつ、相携へて二人の身上しんじようせまれるなり。女気をんなぎもろき涙ははや宮の目に湿うるほひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
病めるものは之を慰め、貧しきものは之を分ち、心曲こゝろまがりて郷里の害を爲すものには因果應報の道理をさとし、すべて人の爲め世の爲めに益あることは躊躇たゆたふことなくし、絶えて彼此かれこれ差別しやべつなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
よしさりとも、ひとたび同胞はらから睦合むつみあへりし身の、弊衣へいいひるがへして道にひ、流車を駆りて富におごれる高下こうげ差別しやべつおのづかしゆ有りてせるに似たる如此かくのごときを、彼等は更に更にゆめみざりしなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)