差出口さしでぐち)” の例文
妙な差出口さしでぐちをする男であるが、べつだん懐中から十手じってが飛び出しそうにもないから、これには何か仔細しさいがあるだろうと七兵衛は
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わたしは一言ひとこと差出口さしでぐちをすると、小作人と大アニキはじろりとわたしを見た。その目付がきのう逢った人達の目付に寸分違いのないことを今知った。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
長兵衞は見遣みやりなんぢまはりの髮結かみゆひならずや何故此所へ來り入らざる差出口さしでぐち過言くわごんなり長助の者を擲出たゝきだせと云ひければ長助は立掛たちかゝり清三郎が首筋くびすぢつかみておもて突出つきだ門口かどぐち材木ざいもく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
言い知れぬ不満を隠しているかのように……女の差出口さしでぐちが気に入らぬかのように……。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
流石の明智も、この事件では、いらざる差出口さしでぐちをして、却って新進宗像博士の引立て役を勤めたかの観があった。彼の推察が見当違いであったのに反して、博士の口約は見事に果された。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そりやだいさんだつて、小供ぢやないから、一人前いちにんまへの考の御有おありな事は勿論ですわ。わたしなんぞのらない差出口さしでぐちは御迷惑でせうから、もう何にも申しますまい。然し御とうさんの身になつて御覧なさい。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
またしても道庵の差出口さしでぐち
おでこが差出口さしでぐちをする。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)